学習する看護組織への道

院内で管理者が学び合うために

私たちが目指す看護組織のあり方

学習する組織

正解のない状況に対して
試行錯誤し続けるひとと組織のあり方

私たちは、目指す看護組織のあり方として「学習する組織」を掲げています。

「学習」とは、困難・障害に直面してもへこたれることなく、試行錯誤を繰り返し、その過程や結果を振り返りながら、自身のあり方・やり方を変化させていく営みです。

すなわち、様々な部門・部署が、組織の目指す方向性に向かって自律的に試行錯誤し、互いにその成果を共有し振り返りながら、変化に適応していくような組織が「学習する組織」なのです。

背景

いまは社会環境の変化が激しい時代であり、医療機関を取り巻く状況は常に変化しています。例えば、医療制度・政策や診療報酬体系は数年ごとに変わります。院内の人員体制も年々変化し、スタッフの世代交代による組織文化・価値観の変化も起こるでしょう。少子高齢化は今後もますます進んでいきますし、今回の新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックが発生することもあります。いつ大規模な災害が発生し、医療ニーズの急な変化が起こるかもわかりません。

このような時代においては、様々な状況の変化に適応していかなければ、組織は生き残ることができません。だからこそ私たちは、たとえ困難に直面しても、試行錯誤しながら前に進んでいくことのできる、「学習する組織」になっていくことが重要であると提唱しています。

学習する組織の3要素

組織を構成する「ひと」が、学習できる状態にあること
「組織」に、実践を共有し共に学び合う土壌があること
ひとと組織が、どちらも「健康」な状態であること

「学習する組織」になるためには何が必要か、「組織」と「学習」の両側面から考えてみましょう。

まず「組織」を辞書で調べてみると、「一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団」とあります(小学館『デジタル大辞泉』)。すなわち「組織」には、役割・機能を果たす成員(ひと)が必要です。そして、そのひとたちが分業し、共通の目標・目的のために協働していくという組織の仕組み(あり方)も必要です。

では「学習」するためには何が必要でしょうか。前項で述べた通り、「学習」とは「試行錯誤し、その過程を振り返って自らを変化させること」をいいます。ですから、まずは自身が困難・障害に直面していることを認めなければなりません。そして、目標・目的のために困難を乗り越えていこうという意思が必要です。さらには、試行錯誤し続ける精神力や体力、その過程を振り返る余裕も必要です。つまり学習のためには、ひとが心身共に健康であることが非常に重要なのです。それに加えて、そういうひとたちが組織として学んでいくためには、困難・障害・失敗を共有できること、試行錯誤や振り返りのために対話できること(=「心理的安全」が保たれていること)も重要です。

上記をふまえ、学習する組織になるためには、上の図の三つの要素が必要なのではないかと私たちは考えます。まず「ひと」のあり方として、組織を構成する「ひと」が学習できる状態にある(=学習のレディネスが整っている)こと。次に「組織」のあり方として、共に実践し共に学ぶことのできる土壌があること。そしてそれらを支える、ひとと組織の「健康」。これらを私たちは「学習する組織の3要素」としました。(さらにいえば、ひとと組織の健康状態は、組織学習によってより良くなっていくと考えられます。)

これらの3要素を整え、看護組織を学習する組織へと導くためのメソッドが、マネジメント・コンパス(MC)なのです。

※上記の内容については、この動画でも詳しく解説しています。院内での認識の共有等にぜひご活用ください。

学習する看護組織の目指すところ

「ひと」のあり方を変え「組織」のあり方を変えていく

学習する組織になっていく過程で、「ひと」のあり方が変わっていくさまと、「組織」のあり方が変わっていくさまを、看護管理者たちをイメージしたマンガで表現しました。

学習する組織へのロードマップ

「ひと」へのアプローチと「組織」へのアプローチ

上記のマンガで表現した流れを、「学習する組織へのロードマップ」としてまとめ、そのための手段を右側に記載しました。

学習する組織になっていくことは、決して簡単ではありません。まずは「ひと」にアプローチし、レディネスが整ったところで「組織」へのアプローチをしていくといったように、段階的に進めていくのが良いでしょう。

今後、この目標を実現するためのモデルケースなどもご紹介していけたらと考えています。