MCチャート
「MCチャート」は、看護管理のカルテシステムです。
マネジメントチームは、組織やスタッフに対して継続してケアを行います。
その方針・プロセス・情報を共有し、協働するための仕組みです。
MCチャートは「看護管理のカルテ」?
電子カルテは患者さんの診療情報を扱う
医療・看護の実践は、一人の患者さんに多くの職種・スタッフが関わり、さらに交代制で行われる業務です。そこでは、医療やケアの継続性を担保することが非常に重要になります。
ですから医療・看護の実践者は、日頃から患者さんの電子カルテに、医師の治療方針や患者さんの意向、ケアに関わる医療従事者が何をしたのかなどを記録しています。
電子カルテへの記録によって、その患者さんに関わる医療従事者が常に顔を合わせなくても、日々変化する治療方針や課題、進捗などをリアルタイムで共有することができています。
また、カンファレンスの際には、電子カルテの内容を見ながら皆で議論し、治療方針や計画を一緒に立てることができます。
このように、日々の記録とリアルタイムの情報共有を行うことによって、チーム医療をうまく回すことができているのです。
MCチャートは組織の管理情報を扱う
日頃はあまり意識されませんが、看護管理も医療・看護の実践と同様、関わる人が交代する可能性のある業務です。もし途中で人が変わっても、部署の課題に対して継続的に対応していかなければなりません。
そこで、看護部管理室と部署の管理者(主に師長・副師長・主任など)が、部署の方針や課題を記録するのがMCチャートです。
MCチャートへの記録によって、その部署のマネジメントに関わる人が、日々変化する部署の方針や課題、進捗などをリアルタイムで共有することができるようになります。
また、必要に応じてMCチャートを見ながらディスカッションすることで、部署に関わる管理者が対話しながら協働して課題に向かうことができるようになります。
このように日々の記録とリアルタイムの情報共有を行うことで、社会環境・状況の変化に応じた(年度にとらわれない)マネジメントを管理者チームで行うことが可能になります。
MCチャートで私たちは何を共有・管理するのか?
方針・課題の共有
【電子カルテ】
多職種チームが治療方針や患者の希望を共有します。
【MCチャート】
マネジメントチームが、組織の方針や、部署・スタッフの思いを共有できるようになります。
計画の共有(P)
【電子カルテ】
看護計画を立ち上げ、期日等を設定します。
【MCチャート】
それぞれの管理課題に対する行動計画を立て、評価・確認の期日を設定します。
実践の管理・記録(D)
【電子カルテ】
看護実践を記載し、チーム内での業務の重複や漏れを防ぎます。必要な情報が共有され、後から検証可能になります。
【MCチャート】
管理の実践を記載することで、管理チーム内での業務の重複や漏れを防ぎ、必要な情報が共有され、後から検証可能になります。
振り返り・サマリ(C)
【電子カルテ】
看護計画の評価日に振り返りを行い、必要に応じて計画を見直します。病棟カンファレンスなどで、取り組みについてサマライズし、共有・議論することもあります。
【MCチャート】
計画がちゃんと進んでいるかどうかを期日に確認し、課題ごとに取り組み・実践の結果を踏まえたサマリを記載することで、次の実践への学びにつながります。
MCチャートの構成要素
MCチャート
多くの看護組織で、管理の基本単位は「部署」になります。MCチャートは「部署」単位で作られ、その部署の課題(目標・問題)を1つずつカードにして登録します。
電子カルテになぞらえれば、患者さんごとにチャートを作り、その患者さんの課題(目標・問題)を挙げ、一つひとつの課題についてチームでの関わりを管理していくという発想です。
課題カード
課題カードには、部署の目標や問題を完結に記載します。
この課題一つひとつに、課題の分析(PDPおよびロードマップ)、具体的な行動計画(Action)が紐付けられます。
課題に優先順位をつけるための「優先」マークや、課題の確認期限を管理する「期限切れ」「完了済み件数」マークなどが搭載されています。
PDP展開機能
問題(困りごと)の分析ツールであり、分析過程を共有することができます。
PDP展開機能には、問題(困りごと)の論理的な流れを整理するための「困りごと整理シート」と、行動計画立案のために問題を細分化する「困りごと分析シート」があります。
問題を細分化し、論理的な対応関係を意識しながら、実現可能なスモールステップを計画することを支援します。
ロードマップ展開機能
目標達成に向けた全体計画(中長期計画)を立てるための分析ツールであり、ロードマップで設計した全体計画をチャートに反映させることができます。
まず、目標と現状の差(ギャップ)を分析します。そして分析されたギャップを、現状から目標にたどり着くまでのステップとして並べます。この過程で、目標達成までの道筋が少しずつ明確になっていきます。
アクションプラン管理画面
一つひとつの課題について、分析に基づき具体的な行動計画を立てて管理します。3W1H(誰が、いつまでに、何を、どのように)を明確に記載する形になっており、PDCAを回すことを意識付けます。
アクション一つひとつについて、完了をチェックすることができます。課題横断的な一覧画面も用意されており、期限別、担当者別にチェックをつけることも可能です。
それぞれの課題には「サマリ」を書く欄が設けられ、課題達成時にはサマリを書いて「達成済み」にするというフローが想定されます。
MCチャートの実際の使い方
看護実践において、患者のカルテの記載は受け持ち看護師の仕事です。
看護管理においては、MCチャート(管理のカルテ)の記載は、部署の師長を中心に行われることになります。
看護実践と看護管理を比較しながら、MCチャートの実際の運用方法を概説します。
部署の管理方針、管理課題(目標・問題)を洗い出す
【看護実践】
受け持ち看護師は、患者や家族の話を聞き、医師の治療方針・計画を把握し、それらを統合して看護の観点から問題(看護問題)を立て、必要に応じて退院に向けた目標を設定します。
【看護管理】
部署の師長は、看護部管理室が部署に期待すること、師長自身の思いや問題意識、データや他部門の声などをもとに、部署の目標と問題を設定します。
この時に重要なのが「対話」です。看護部管理室・副師長・スタッフそれぞれとの対話の機会を設け、課題のすり合わせを行いましょう。
管理課題を分析し、計画を立てる(P)
【看護実践】
受け持ち看護師は、看護問題や退院目標をより具体的に分析し、それに応じた看護計画を立てます。そして、それぞれのケアに関して期日等を設定します。
【看護管理】
師長は、部署の目標と問題についてアクションプランを立て、担当者や期日を設定します。必要があればPDPやロードマップといった分析機能を利用し、より具体的で実現可能な計画に落とし込みます。
計画に沿って実践し、実施内容やそこで起きた事象を記録する(D)
【看護実践】
看護計画に沿って、チームでケアを行います。実施内容やそこで起こったことは、その都度電子カルテに記録します。
【看護管理】
アクションプランに基づき、チームで業務を行います。師長は、担当者が計画通りにタスクを進められているかをチェックし、タスクの実行を支援します。
各課題について実践とその結果を振り返る(C)
【看護実践】
受け持ち看護師は、看護計画の評価日に振り返りを行い、サマリを書きます。
【看護管理】
師長は、課題に紐付けられたアクションプランが完了しているかどうかを確認します。完了している場合はサマリを書いて、課題カードを達成済みにします。
必要に応じて計画を改善し、再び実践する(A)
【看護実践】
受け持ち看護師は、計画通りに進まなかった場合は看護計画を見直し、計画に沿ってケアを行います。
【看護管理】
師長は、課題が達成できていない場合はアクションプランを見直し、再び課題に取り組みます。